試験前日まで 実際の試験は,パサデナで受験した。行ったことのあるLAに近かったのと,LAダウンタウンは治安が心配だったのと,行きたかったノートンサイモン美術館があったからである。
時差ぼけを心配し,また月曜日に出発しても土曜日に出発しても仕事を休む日数は同じであったため,早々と3日前に試験会場入りした。
緊張のせいか時差ボケもなかったのでその点では早めに行く必要はなかった。ただ,早めに着いたので,事前に試験会場を下見し,慣れない街の空気に馴染むことができたし,ホテルにこもって最後の追い込み勉強を集中してすることができたのはよかった。
試験1日目午前中 1番不安だったのが,パソコンがきちんと動くかどうかだった。万が一手書きになったら,時間的に合格答案は書けないことが分かっていたので,パソコンにアクシデントがあれば,合格をあきらめるしかないと覚悟を決めていた。
試験開始前にパソコンをネットに接続させようといじっていると(実際には接続できないようになっていた),突然画面が赤くなり,「WARNING」という表示と大きな手のマークが表示された。「何かしてはいけないことをしてしまったに違いない」「終わったか・・・」等と思って焦りまくって周りを見ると,何人かのパソコンに同じような表示がされていた。
時間前に試験会場の特別なテスト用の接続にアクセスしようとするとなされる表示であったようで,しばらくすると無事に同表示も消えて,順調に特別なテスト用の接続にアクセスすることができ,アクシデントなくパソコンで試験を進めることができた。
試験開始前に,替え玉防止のためか「両親の旧姓」「受験番号を後ろから」など,いくつかの指示に従った事項を手書きするよう指示されるのだが,リスニングに自信が持てず困った。
しかし,ここで恥ずかしがって間違えるわけにはいかないと思い,試験官を挙手して呼び,自分のリスニングがあっているかを確認し,ようやく安心することができた。
1問目
1問目は,quasi-community propertyの生存中及び死亡時における取り扱いという割と細かな知識がないと非常に混乱する問題であった。
自分は,その部分にヤマを張っていたというか,かなり深く勉強しており,「ラッキー!」と気分よくスタートを切ることができた(実際には,私の知らないQCPに関するルールが適用される状況だったようだが,それはC論点。知っていた人はほとんどいないと思う)。
さらには日本の司法試験で国際私法を取得して学んだ他州要式の遺言が有効かというB論点も続き,「これも知識があいまいな人が割りといるんじゃないかな〜」と気分良く進められた。
そもそも,community propertyは4回連続での出題。3回連続で出題されたから,今回は出題されないとヤマを張らなくてよかった〜とも思っていた。やはり,科目にヤマを張るのは危険すぎる。
小問2では,後見人(conservator)が遺言を書けるかという,これもまた過去問で出題されているがアウトラインにはないというB論点。「やはり過去問に出たことはアウトラインにでていなくても出題されるな〜,これも知らない人いるだろう」と,いっそう気分良く進めることができた。
小問3では,撤回可能信託において,信託設定者が判断能力を失い,その後死亡した後,債権者が信託財産を差し押さえることができるかが問われた。アウトラインで見たこともないし,過去問でも出題されていない。「これはC論点だな,誰も知らないから適当に書こう!」と自信をもって適当に書いた。確か,「撤回可能信託において,債権者は,設定者の生存中は信託財産を差し押さえることができるが,死亡後は,債権者を害する意図があったなど特段の事情がない限り差押はできない」などとルールをでっち上げ,適当に当てはめをした(実際には,特段の事情の有無にかかわらず普通にできないようだ。)。
55分で書き終えること(900語ほど)ができたが,多くの受験生より早くできた自信があり,かなり前向きな気分で次に臨むことができた。
2問目
2問目は明らかに不法行為tortの問題。不法行為は私の中では,時間をかければかけるほど良い点が取れる科目。しかし,次の問題をみないとどこまで時間をかけてよいのかが分からない。そこで,3分ほど見て,先に3問目をやることした。
3問目
3問目は,不動産財産法,ほとんどがA論点で,論点も落としようがないという簡単な問題(nuisanceに関する論点はB論点の可能性がある。今思うと短期家具付きリースもB論点かもしれない。)。
しかし,なぜか,”Warranty of quiet enjoyment” というキーワードがどうしても思いだせなくなってしまいショックを受けた。さらに,(後で考えれば,正しいスペルを表示させる機能を使えばよかったのだが)habitability という単語が,何度書き直しても「スペルが違う」ことを表す赤い波線が消えず,これにはかなり焦らされた。
思い出せないものは仕方がない!と開き直って,Warranty of quiet enjoymentというキーワードを使わずに済ませ,habitabilityもスペルミスを承知のままにして,800語程度で50分で終わらせ2問目に戻ることにした。
2問目
不法行為法はいつも70分あっても時間が足りないため,70分以上時間が残っていたが,かなり緊迫感をもち,答案構成を事前にせずに,いきなり回答を書き進めていった。
問題を回答している中で,不動産所有者の特別な過失責任が問題なっていることに気づき「良かった〜,過去問練習でこれを忘れたんだよな〜」と思い,気分を良くして書き進めた。残り10分になってからbattery等の故意の不法行為が問題になっていることに気づき「危なかった!気づいた,ラッキー!」と思って,自分の持っているものは発揮でき,気持ちよく午前中を終わらせることができた。1050語くらいであったと思う(全論点に触れて良くできた〜と当時は思っていたが,帰って来てから解説を見たり聞いたりすると,結構論点を落としていた。現地で情報を得ないことで,気分良いままに進めたのが良かったのかもしれない)。
試験1日目午後 PTで点を稼ぎたいし,時間さえあれば稼げる(65点以上を取れる)と思っていた。そのため「勝負は時間」,何としても4問目5問目を合計105分で終わらせて,PTに105分を使えるようにしたいと思ってスタートさせた。
4問目
4問目は証拠法/民訴のクロスオーバー。カリフォルニア証拠法を非常に得意としていたのだが,残念ながら連邦証拠法,「さすがにCA証拠法は2回連続ではこないか〜」と残念に思うとともに,証拠法はいつも時間が足りなくなる科目。これは60分使うしかないなあとあきらめながら進める。
ところがクロスオーバーされていた民訴は何度何度も起案して非常に自信をもっていた事物管轄権の問題。こちらは覚えていたことをハイスピードで書くことができ,それでなんとか55分ぐらいで4問目を終わらせることができた。
常に証拠法で頻出のhearsayについて書くことがほとんどなく「何か,重要な見落としがあるのか・・・」と不安に思いつつも,PTに時間を残すため,振り返らずに先に進んだ。900語ぐらいの答案であった。
5問目
5問目は弁護士倫理。カリフォルニアの新ルールを聞かれたら自信ないな〜と思っていたのだが,新ルールに関係のない,前例もありそうな問題。これもまた,頻出の守秘義務や忠実義務が出てこないことに不安を覚えながらも,すらすらと書くことができたので,45分で終わらせ,PTにかなり時間を残すことができた。
800語もない短い答案となったが,経験的に弁護士倫理は長く書いても,余り点が伸びないので,PTでよしんば時間が余ったら,いま一度証拠法を見直そうと考え,次に進んだ。
(なお,実際には,懲戒処分にあった弁護士を事務員に採用する場合には弁護士会に通知するというCAの新ルール?違反をあげる必要があったようだ。まあC論点だろう。)
6問目
最後のPTは,練習では,成績はかなり時間に比例していた。そのため,望外の110分も時間があった本番では,取り組む前からかなり自信をもって進めることができた。
実際に,今まで練習で書いたどの答案より自信のある答案が書け,今までほとんどできなかった反対意見を叩くという加点要素にまで踏み込むこともできた。
残り10分ほどで,早くも「とにかくやれることはできた〜」という喜びから,涙ぐんでしまい,「まだ終わってないぞ!油断するな!」と鼓舞して,改めて証拠法を見直した。
今までの練習では,決して時間が余ることはなく,一度も見直しをすることができなかったので,5分ほど1科目だけとはいえ,見直せることができて凄く嬉しかった。
2日目 1日目の物凄い緊張とは異なり,2日目はだいぶリラックスして受験できた。慣れたというのもあるし,パソコンについての心配もいらなかったというのも大きい。
MBEについては,練習では30分で17問のペースを厳しく守り,16問しかできなければ気持ちスピードをあげ分からなくても回答し,18問できていれば少しのんびりする・・・と時間のことばかり気にしながら,常に時間ぎりぎりまでかけて解いていた。
しかし,本番では,特別の集中力からか,90分で54問と予定より3問もリードしたペースで進めることができ,後半は余り時間を気にせずにやることができた。最終的には5分ほど時間が余り,余裕があれば見直そうと思っていた試験用紙を目印に折り曲げていた勘で回答した問題を今一度検討することができた。
緊張のせいか,鉛筆を削っていくのを忘れ,爪で芯をほじくり出すという恥ずかしい行動に出てしまったり,途中で回答が問題とずれていることに気づき青くなったりもしたが,時間内に無事に終わらせることができ,ホッとしながら試験を終え,翌日は,ゆっくりとノートンサイモン美術館を楽しむことができた。
発表前 それなりに合格を信じて帰国し,その後は,試験のことをすっぱり忘れたまった仕事に追われて日常業務に戻っていた。
しかし,合格発表1週間前になって,ネットなどで情報を集めてみたところ,自分のエッセーが多くの論点を落としていたことや,いくつかのルールを誤解していたことに気づき,急に自信がなくなってきてしまった。
目標としていたエッセー平均60点,MBE75%は取れただろと考え,合格に自信があったのだが,そもそもとして果たしてそれで合格なのかもはっきりしない。
さらに考えてみれば,MBEで75%取れたというのは,その前に模試形式でトライしたときに75%以上正解したことだけが理由なのだが,本番もできているという保証は,考えてみればどこにもない。
「落ちていたら,もう一度受けようという気力をもつことができるだろうか…」「みんなに合格しているようなことを言わなきゃよかったか‥」と不安をもちながら発表を待った。
合格発表の朝,時間になりネットにアクセスすると,The name above appears on the pass list という表示が見えた。「これ合格ということだろ〜!」と思ったものの,本当にその表示が合格を意味するのか,すぐには自信が持てなかった。
ネットで15分ほど色々と調べてみたところ,これが合格を意味する表示であるということを理解し,ようやく遅れながらも喜ぶことができた。