しかし,カリフォルニア司法試験においては,対立はない。
予備校本派が圧倒的な勝利をおさめている。
日本人受験生からもアメリカ人受験生からも,「予備校本だけで十分」「基本書(law school学生用のsupplement教材)は読む必要がない」という意見しか聞いたことはない。
圧倒的多数意見である以上おそらくは正しいのだろうが,それでも私は基本書を推したい。
問題演習をやらずに基本書ばかり読んでいてはダメだろうが,少しは基本書も読んだ方が合格に早いと思っている。
法の趣旨
日本とは異なり,アメリカでは法の趣旨=法律がある理由については極めて軽視されている。
多くのアウトラインや予備校本にはほとんど,「どうしてこのようなルールがあるのか」は記載されておらず,ただひたすらにルールを丸暗記させられる。
しかし,アメリカでもルールを作るためには,当然のことながら,理由がある。そして,日本法の勉強に慣れた者にとっては,その理由,つまり法の趣旨を理解した方が,理解は早いかもしれない。
本にもよるが,多くの基本書には,どうしてこのようなルールがあるのかについての説明がある。
エッセーでそれを書く必要はないため,そのような理由を知らずにひたすらにルールを覚えても足りる。
しかし,遠回りのようであっても基本書を読んで理由を知ってからルールを覚えた方が早道の場合も多いとも思う。
事例の勉強
上記も重なるが,ルールは何らかの事例をもとにして作られている場合が多い。
その時に,そのもとになった事例を知るとルールが覚えやすいし,また,カリフォルニア州司法試験の問題はすべて事例問題であるため,あてはめ能力をあげるためにも事例を知っておくことは効果的だ。
この点も,事例は,カリフォルニア州司法試験の問題集をやれば,嫌になるほど出てくるため,ルールを丸暗記し,ルールと事例の関係については,カリフォルニア州司法試験の問題集の中で勉強していけば足りる。
しかし,この点も,遠回りのようでも基本書を読んで,最初からルールと事例をセットで覚えた方が早道の場合も多いと思う。
勉強を楽しく
基本書を読む最大のメリットは,それが面白いからだと思う。
ルールをひたすらお経のように唱え暗記することができれば,基本書は合格のためには不要であろう。
しかし,そのような勉強は少なくとも自分にとっては非常に苦痛だ。
受験直前は,そのような勉強もしたが,長期間に渡りそのような苦行を課すことは,私には無理だった。
それよりもユーモアが混じっていたり,筆者の個性がにじみ出たりする基本書の方が読んでいて,ずっと楽しいことは間違いない。
そして,楽しく勉強した方が,長い目でみて効果的だということもあると思う。
デメリット
基本書の問題点して,基本書には試験範囲外のことも書かれている点がある。特に,「深い」場合はいいのだが,「広い」場合は問題である。
例えば,material breachかどうかについて10の事例が出ていて,それぞれについて細かく言及している基本書は「深い」。
そこまでカリフォルニア州司法試験で勉強する必要はないであろうが,material breach自体は頻繁に出題されるので,そこまで深く勉強しても必ずしも無駄ではない。
一方で,動産の善意取得については,試験範囲外で出題される可能性は全くなく,そこまで言及する基本書は「広い」。そこまで広く勉強するのは明らかに無駄であろう。
そのため,全てが明らかに試験範囲な入門書を除いては,まずは,試験範囲をよく理解してから基本書を読んだ方がいい。
一方で,試験に必要されることが分かってから読むのであれば,必要ないところは読み飛ばせばいいだけの話であり,さほど遠回りになることもないと思う。
もう一つ,基本書を読むデメリットは,受験界通説でないルールを覚えてしまう可能性があることだ。
エッセーのルールは受験界通説を書かなくてはいけない。
ところが,その説が激しく基本書で批判され,過去のルールであるなどと記載されていると,その基本書の説を書いてしまいがちである。
しかし,カリフォルニア州司法試験において,それは避けるべきだ。
ただこの点も,受験界通説を知ってから基本書を読めば,避けられるデメリットに過ぎず,基本書を読んではいけない理由にはならないはずだ。
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