2020年01月09日

日本人ノート


 主にニューヨーク州司法試験であるようだが,「日本人ノート」なるもので勉強している受験生が多数いるようだ。
 私は,「日本人受験生の知り合いがいないのでそんなものは入手できなそうだが,入手しないと不利になるのか?」などと最初悩んでいた。
 結論からいえば,あって損ではないだろうが,なくても大したマイナスはないと思う。

 ネットで調べてみると,韓国人の世界では「韓国人ノート」が出回っているようだし,当然ながら「アメリカ人ノート」はその何十倍も出回っている。
 
 その中で,あえて日本人ノートを勉強素材として利用するメリットは,日本語での説明があるため,理解が早いという点であろう。
 しかし,日本語の方が,確かに理解は早いのであるが,一方で,英語力取得には遠回りであり,利用したほうが近道かどうかは微妙なところである。

 文化的にあるいは日本法との違いのために,特に日本人が理解しづらい概念を丁寧に説明されているのであれば,かなり使い勝手は良い。しかし,見ていないのでわからないが,そのような高度な説明をコンパクトにまとめたノートを期待するのは難しいであろう。

 なお,日本人ノートにしてもアメリカ人ノートにしても,あるいは予備校作成のアウトラインについても,「内容に間違いがある」「内容が古い」と指摘する人がいる。
 しかし,あまり気にする必要はないと思う。確かに,間違いのないノートはないであろうが,ルールは多少間違えたとしても,点数に与える影響は少ないからである。重箱の隅はつつかない,いや,重箱の真ん中であってもつつかない,大ざっぱでアメリカンな態度が,カリフォルニア州司法試験では重要だ。(it sucks...)

2019年10月08日

新しい情報の必要性

原則古くてOK
 基本的にカリフォルニア州司法試験の出題の基本となる法律は大きく変わっていない。20年前の資料でも普通に役立つし,多くの科目は10年前の教材でも十二分である。

 というのも,カリフォルニア州司法試験は,基本的にはコモンローから出題されるが,コモンローは長年,蓄積されていた裁判例の積み重ねの上にある基本原則であるため,数年で変わるということはあり得ないからである(加えて,試験自体いい加減なところが多く,多少の誤りは減点にすらならないというのもある)。

 5年も前の予備校教材を利用する人はいないだろうが,それでもほぼ問題はないし,1〜2年前の予備校教材であれば全く問題はない(除く弁護士倫理のCA new rule)。

 また,最新の最高裁判例や法律変更を追いかける必要もなく,本に出ている範囲で覚えれば十分だ。2017年発刊の本に2016年の重要な最高裁判例が載っていたりすると,新しい重要判例がないか心配になるが,そのようなところから出題されたことは,知る限り(つまりこの20年ぐらい)はない。
ネットによる情報だが,最新の判例が出たとしても数年は出題されないといわれているらしい。

 とはいいつつ,いくつかの科目では,古い資料では問題がある場合もあるので,以下,科目ごとの注意点である。

新しい情報が不要な科目
契約法,不動産財産法,刑法,商組織法は,この20年大きく変わっておらず,古い本や資料であっても完全に問題がない。信託法も同様である。

 信託法は,2000年に従来のルールと相当に異なる統一信託法が公表され各州で採用が進み,従来のリステイトメントから大きく変わった第三次リステイトメント2012年に公表されるなど,現代化が進んでいる。そのため,本質からいえば新しい資料から学ぶべきである。
 ただ,信託法が相当に変化しているとはいえ,カリフォルニア州司法試験でその理解まで必要があるのかは微妙なところで,「高得点を目指す人は新しい資料に目を通して得になることがほんの少しはあるのかな〜」といった程度であろう。

 不法行為法は,コモンローがベースであり古い本でもよいが,製造物責任の考え方が20年前とは大きく変わっているので,10年以上前の資料は微妙な場合もある。

 商組織法は,法律は頻繁に変わっているのだが,問題に出るのは,変わることのない基本部分である。そのため,20年前のものでもよさそうであり,10年以内のものであれば十分だ。

 リメディ―も法源は基本コモンローである。ただUCCや最高裁判例も視野に入れる必要があり,20年前のものでは少し古すぎるかもしれない。とはいえ,10年以内のものであれば十分だ。

新しい情報が必要な科目
弁護士倫理→憲法・刑事手続→遺言・夫婦共有財産,証拠法→民事手続の順番で,割と新しい本がいい。

 弁護士倫理については, CA ruleが2018年に大改正をされたため,そちらについては必ず最新のもの(2019年以降)を入手する必要がある(CAruleはほぼ毎回出題される)。
 ただ,恐らく良い本はまだないので,まずは規則原文を確認し,その他には,予備校本かネットでまとめを探す必要がありそうである。
 ABAについては,改正は適宜あるが,大改正はないと思うので5年前のものでも十分そうだ。

 憲法・刑事手続
は,最高裁判例が法源で,次々と重要な判例が出るので,新しいものが必要である。
 最新の判例からは出題されないので最新のものである必要はないが,できれば2〜3年以内,最悪でも5年以内の資料を参考にすべきだろう。

 遺言,夫婦共有財産は,適宜改正がされるカルフォリニア州制定法が法源である上,重要な州最高裁判例なども出ているため,2〜3年以内に出版された新しい本の方が良いことは確かだ。
 ただし,MBE科目などと比べて,新しい点が,出題される可能性が非常に低いため,実際には古い本であっても影響はまずない。

 証拠法は連邦法,CA法とも定期的に改正されており,重要な最高裁判例も出ているため,5年以内のものを利用したい。 

 民事手続も,主法源であるFRCPが2007年に大改正が行われており,頻出のpersonal jurisdictionについては最高裁判例が法源とされ,割と揺り動いているため,少なくとも10年以内,できれば5年以内に出版されたものが安心である(Ca民訴については勉強不足で分からない)。

判例と論文

判例
 ロースクールに行かないで受験した人の中では,自分は,多くの判例を読んだ方だと思う。
 ロースクールに行っていないハンデがあるので,ある程度判例を勉強しないといけないのでは・・・と不安に思ったためである。
 また,カリフォルニア州司法試験に合格したと言いながら,ほとんど判例を読んだこともないとなっては恥ずかしいという思いもあった(ロースクールに行っていないコンプレックスもあったのかもしれない。)。

 結果として,それなりに意味があったと思う。
 判例には,法律業界以外ではあまり使われない単語がかなりたくさん出てくるのだが,それは本試験においても重要となる単語である可能性が高い。そういった単語が多く使われている文章を苦も無く読めるようにする練習は,エッセーにおいても必要だし,とりわけPTにおいて重要となるためである。

 主に読んだのは最高裁判例だが,日本の最高裁判例と違って,それぞれの裁判官が個性的な文章を書いており,また,論理も明確な場合が多く,意外に読みやすくかつ面白かった。

論文
 分からないことをネットで検索していると,色々な論文にいきつく。そのようにして,多くの論文を読むことになった。

 特に読んだのはMBEの問題を解いてみて回答に納得ができないときであった。
 例えば,「空き地で鉄砲の練習をしていて外して人にあたると殺人?故殺manslaughterではないの?」などと気になることがあると,まずはwikipediaなどで調べるのだが,どこまで頼りになる情報なのか分からず,結局は論文を読むことになることがよくあった。
 
 しかしながら,論文を読むのは,時間の無駄であった可能性が高い。
 というのも,カリフォルニア州司法試験は厳格に考える必要のない,大雑把に考えるべき試験であったからだ。
 「多くの子供が遊ぶ広場の横で木に向かって射撃訓練で弾が外れる場合は殺人」と理由も何もなく覚えてしまえばよく,「どうしてなの?」とソースを突き詰めても,細かくは州ごとに考え方もルールも異なるため何も得るものはない。
 しかも,カリフォルニア州司法試験では,そんな細かいことは問われず,点差がつくこともない。

 確かに,法律論文を読むことは,法律文書を読む能力をつけるには効果的である。しかし,その能力は別に論文を読まなくてもつけられる能力であろう。

 そもそも,私がよく論文を読んだのは,分からないことを調べるための辞書的な基本書を準備しておらず,ネットによる情報が頼りであったからだ。
 しかし,Emanuelのアウトラインシリーズでもよいし,ChemerinskyのConstitutional Lawや,Dukeminierの Casebookでもよいので,読むには量が多すぎるが調べるのに便利な基本書を手元に置き,私のように分からないことをネットで調べるのではなく基本書で調べるというのが正しい姿勢であったと思う(私は勉強期間終盤,本を買い揃え初めてそんな形式になった)。

2019年06月20日

FLASH CARD

 
 日本でいう単語帳。暗記のために,カリフォルニア州司法試験の試験会場近くでもかなり多くの人が利用していた。紙ベースでは多分critical passが一番人気。

 私は,Barboost MBEというアプリを利用した。
私は勉強当初から利用したがこれは大失敗。良く考えてみればフラッシュカードはそもそも直前暗記用に使うべきもの。これで最初から勉強しようというのは間違いだった。また,後で分かったのだが,同カードのレベルはかなり高く(一部,試験レベル以上),それを最初からやるというのも間違いだった。
ただ,Barboostはbarbriとは違う視点・表現でルールを作成しており,非常に勉強になるカードであるので,勉強が進んでからは非常に重宝した。

 Barmaxにもフラッシュカードがついているが,こちらは全然駄目であった。アウトラインを工夫せずにコピペしているだけ。これであれば,アウトラインを手で隠しながら勉強するのと違いがない。

 その他quizletというサイトでたくさんの無料フラッシュカードが手に入る。これは,誰が作成者かよく分からず,内容もピンキリであるが,その分,楽しくもあった。ただ,どうしてもソースがはっきりしないという不安は拭えない。

条文について

 
  日本での法律の勉強においては,条文の重要性が繰り返し喧伝されるが,アメリカにおいては,条文がない科目も多いし,条文(Restatement含む)の重要性は科目において大きく異なる。そのため,それを知っておくことは重要だと思う。
 また,一般的な条文の重要性は別に,barexamにおいて条文を調べながら勉強することが重要かは異なる問題でもある。
 各科目ごとのbarexamにおける条文の重要性は以下のとおりである。
(なお,条文は表現が難しい場合も多いので,いずれにせよ,勉強当初は見なくてもよいと思う。)

憲法
最高裁判例が規範。条文は択一には役立つのもあるが,基本的には条文を見る必要はない(とはいえ,米国法を勉強する以上,アメリカ憲法ぐらいは見ておきたいとは思う。)。

契約法
Restatement 2ndは実際の裁判例においても,barexamにおいても非常に重要視されているし,名文で分かりやすくもあり,最低一読を薦める。ただ,それをそのままルールとして使うと長くなるので,あくまで「理解」のために読むにとどめておいた方がよい。
UCCは条文自体は非常に重要なのだが,barexamに必要となる条文は半分以下。素読するのはやや時間的に無駄。分からない時に調べるのが良い。

不法行為
原則として裁判例が法源であるため,各州で微妙に違う。
Restatement 2ndと3rd があり,どちらも非常に分かりやすい,良いRestatementだが,双方の内容は相当に異なり,受験界通説はいまだに2ndの場合も多いが2ndは必ずしも実務上通説ではない。そのため,下手に読むとかえって混乱する可能性が高い。余裕があったら見ればよい。

不動産財産法
Restatementは実務上無視されているし,しかも,受験界通説とも実務上通説と異なる場合が多い。読む必要はないし,むしろ読まない方がいい。
制定法はたくさんあるが各州違うし読む必要なし。
そのため法源を調べるという勉強は不要だしやめた方が良い。

刑法
MPC(模範刑法典)という全米統一刑法案が存在するが,受験で必要とされるコモンローとは相当にずれているため読んでいない。条文は不要。(勉強すれば加点にはなりそう)

刑事手続
憲法の数条は覚える必要がある。その他は最高裁判例が規範であり参考とする条文は存在しない。
(刑事訴訟法の条文は基本範囲外。完全に範囲外ではないが少なくとも見る必要はない。)

民事手続
法源が@連邦規則A合衆国法典(U.S.C)B最高裁判例(対人管轄)の三つに分かれており,@だけとってもbarexamに不要な条文にあふれており,条文で勉強するのは厳しい。必要なときに参照するぐらいであろう。

証拠法
連邦証拠規則,カルフォルニア州証拠規則とも,コメント含めてすべて読んでよいほど直接barexamに結びつく。本文は必読だと思う。

弁護士倫理
ABAルールもCAルールも簡潔にまとまっており,そのまま暗記ルール集にできるレベル。barexamでは覚えなくてもよい部分も公式ルールにはあるが,常に手元に置き,コメントも含めて必ず読みたい。

代理法
代理法はよくできたRestatementがある。長大であった2ndをコンパクトにまとめたもので,半分は試験範囲外だが,そのまま暗記ルールにできる簡潔な表現で一読をお勧め。

組合法
RUPAが契約法におけるUCCにあたる重要条文だがカリフォルニア州は採用していないし,試験で必要なのは3割ぐらいなので,まあたまに参照しても良いかなという程度。

会社法
統一法,デラウェア法等が参照しても良い条文候補だろうだが,本来は州ごとで大きくバラバラなのため,braexam受験のためだけであれば条文は参照しない方がいいと思う(余計混乱する)。

遺言・信託
遺言については,試験範囲となるCAの法律の条文番号をbarが具体的に明示している。その条文量は多くなく,ずばり試験範囲なので,必ず読みたい。
信託は,契約法同様,リステイトメントがあり,また契約法のUCCにあたる統一信託法が重要な位置を占める。
しかし,半分以上は試験範囲外であり,読む必要はない。

夫婦共有財産 
試験で必要となる条文はprobate codeとfamily codeに分かれており探しづらく,条文はやや長大でそのまま暗記ルールとして使いづらい。
しかし,条文という明確なルールがある以上,適宜参照はしたい。

リメディ
契約法のRestatementやUCCが契約のリメディ―については重要は法源。
それ以外については基本的には各州のケースローが支配しており法源にあたる必要はない。
不当利得法専門のRestatementがあるが未読。


探すのに苦労した条文は以下のとおり。ネットで見つけづらいもの多い。
不法行為のrestatement全文が一番欲しかったが無料では見つからなかった。

Restatement 2nd 全文(コメントなし)
https://docplayer.net/28746007-Restatement-second-of-contracts.html

UCC全文
https://www.michigan.gov/documents/entireuccbook_18831_7.pdf

Agencyのrestatement全文
https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjc0ubslKLbAhXLE7wKHdBKCboQFggyMAE&url=https%3A%2F%2Fwww.law.berkeley.edu%2Fphp-programs%2Fcourses%2FfileDL.php%3FfID%3D12067&usg=AOvVaw0MOxneGSrc-ysA0ZcGgsIp

RUPA{改正組合法}全文
https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwi99frRneXgAhXLurwKHdpRDyQQFjABegQIYxAC&url=https%3A%2F%2Fusers.wfu.edu%2Fpalmitar%2FICBCorporations-Companion%2FConexus%2FUniformActs%2FRUPA1997.pdf&usg=AOvVaw3M6MWnmkFEdvbeJnjfYpl9

統一信託法全文
https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwjM9oDtneXgAhWEWLwKHZ36CfIQFjAAegQIYhAC&url=http%3A%2F%2Fwww.uniformlaws.org%2Fshared%2Fdocs%2Ftrust_code%2Futc_final_rev2010.pdf&usg=AOvVaw2o2rYp88XUq2gFSe8wl-6e